ロシアの大衆歌謡をロシア語でルースキーシャンソンという。
ルースキーシャンソンは遠距離バスの運転手さんや、汽車の中で人々がよく聴いている。
これを聴いているとちょっと疲れるけど、
「ロシアに居るんだな~」
という気持ちになる。
先日、偶然に面白いグループを見つけた。
グループの名前は”レサパバール”。
「森林伐採」という意味だ。
何故このような名がグループ名になったかというと、
このグループを結成したうちの一人、
ミハイル・タニッチ(1923年生)は
戦後1947年に理由もなく牢獄へ入れられ、
1953年にスターリンが亡くなるまで、シベリアで森林伐採の強制労働をさせられた。
彼はその苦しかった経験を歌にして、
1990年にグループ ”レサパバール”を結成したのだ。
中心になって歌を歌っているのは、
このグループを一緒につくったセルゲイ・クルシュコフ(1959年生)である。
セルゲイは医学専門学校を卒業した後、4年間、救急隊員として働いていたが、
その後12年の間レストランで弾き語りをして生計をたてていた。
セルゲイはミハイル・タニッチに見出され、
その渋い声と容姿でグループの中心となって活躍することになる。
レサ・パバールの面白さは、歌ばかりでなく、踊りも入るから、
言葉がわからなくても十分楽しめる。
雰囲気は素朴なロシアの労働者たち。
歌は前科のある人の歌。
だから、また面白い。
前科があるといったって、
スターリン時代には理由もなく牢獄へ入れられた人々が多いから、
その歌の歌詞にも隠された様々な思いがこめられていたりする。
いくつかビデオを紹介しようと思う。
最初のビデオは西シベリアの中央にある町スルグトの刑務所で、
1992年12月に行われたコンサートの様子をニュースにしたもの。
http://www.youtube.com/watch?v=AWHqCgZlxpw&list=PLA00CDC6F40A4BED8
次のビデオはザパベッチ(戒め)という歌、
神父様とのやりとりが面白い。
http://www.youtube.com/watch?v=t4ucfM-0lQE&list=RD1ZpwbsxfxOU&index=15
歌詞を訳してみた。
”戒め”
俺は退屈なわびしさから元気を取り戻した。元気を取り戻したんだ。
セルビヤーノチカ(古い民謡と踊り)で跳ねて踊ってる。踊ってる。
隣には神父さん、エブランピイ。
繰り返し(2回)
過ちから俺を救ってくれた。
裏切ってはいけないよ! - 裏切っちゃいねえよ。
殺してはいけないよ! - 殺してなんかいねえよ。
出し惜しみしてはいけないよ! - なけなしのシャツをやるよ。
盗みをしてはいけないよ! - おっと、俺はそいつをやっちまったんだよ。
そうなんだ、それをやっちまったんだ。
馬鹿なことをしちまったぜ。
俺はもう長いこと牢獄に居るんだぜ。 牢獄に。
まるで修道僧のように暮らしているんだよ。
罪のない俺は、まるでマリア様のようだ。
2回繰り返し
でも俺はズボンをはいてる男だけどな、神父さんよ。
以前は世の中不景気だったんだよ。 不景気だったんだ。
それでもって俺は若ぞうで一人身だった。独身だったんだ。
10 の戒めは - 多すぎるよな。
2回繰り返し
俺はさ、神父さんよ、聖人じゃないんだよ!
俺は9つの戒めを守っているさ、 いやっ俺はすげえな~。
嘘は、つかないようにするさ。嘘は、つかねえよ。
だけど10番目の戒めは・・・ - 気まぐれじゃないんだよ。
2回繰り返し
その 盗みはさ、俺の専門職なんだよっ!
1994年、歌手のセルゲイ・クルシュコフが自宅のベランダから転落して即死する。
原因はわかっていない。
セルゲイ・クルシュコフが亡くなって、グループはしばらく活動をやめた。
が、その後新しい歌手達を迎えて
ミハイル・タニッチの指導の下で今も人気をたもっている。
新しいグループ”レサパバール”のビデオも紹介しておく。
http://www.youtube.com/watch?v=aIroVi6aorA
これらのビデオや曲を聴いて、少しでもロシアの雰囲気を感じてもらえると嬉しいと思う。
追記: 写真はウィキペディアから拝借しました。