ぶか~しゅか の ひとり言 (from:モスクワ)

ロシアは日本人にとっては知らないことが多い国。日本の考え方は100パーセント通じない国。でも見かたを変えれば、面白いことも多い国。ロシア人のなかで暮らす日本人の私が、見て感じたロシアをそのままに書いてみたいと思います。

スーパーでの会話

モスクワにある大型スーパーは、
値段が手ごろで、品ぞろえも多いのでよく買い物に行く。
そこで果物を見ていたら、めずらしいものを見つけた。


名札を見るとリイチと書いてある。
よ〜く考えて、観察して、ライチだとわかった。


ライチを私はまだ食べたことがなかったので、
味を知らない。


山積みになっているライチを
ビニール袋に大量に詰め込んでいる女性に
どんな味なのかきこうかな〜っと思った途端、
横から大きな声で私の知りたかったことをきいた人がいる。


「ねえ、これはどんな味なのかしらね。
 これは果物なの?野菜なの?美味しいの?
              どんな味なの?」


臆することもなく、
ロシアの人たちはききたいことがあれば
そばにいる人になんでも直に質問する。


質問された方も気おくれせずに、はっきりと答える。


「これは果物よ。
 ブドウみたいなものでほんのり甘くて美味しいの。
 うちの子なんか大好きで
 1日で3キロ食べちゃうんだから。」


こんな風に会話が始まり、


「あらそうなの。そんなに美味しいの。
 で、どうやって食べるのよ。」


ときき返す。


すると、きかれた女性はライチを1つつまんで、
爪でペロッと皮をむいて見せた。


そして、
「ほら。こうして食べるのよ。」
と言って口に入れた。


「あら、じゃ私も味見してみるわ。」
質問した女性も、興味津々で、1つつまんで口に入れた。


こんな風にスーパーで味見をするのは禁止されている。


でもロシアの人たちは、
市場でするように味見してから買うという習慣を
スーパーにもそのまま持ち込んでいる人が多い。


だからこういうことを悪いこととは感じていない。


勿論、店員に見つかれば、きつく注意されるのはわかっているはずだが、
そんなことを恐がっているようじゃロシア人ではない。


注意されれば言い返し、すぐに謝らないのがロシア人だ。


私が、干した棗にシロップのかかったものを選んでいた時には、
「ねえ、いったいどういうところを見れば
         美味しい棗を選べるの?」
と、突然きかれた。


私は、
「ただシロップがあまり多くかかっていないのを
 選んでいただけですが。」
と答えると、


「なぁんだ。ずいぶん熱心に選んでいるから、
 選び方を知っているのかと思ったじゃないの。」
とがっかりした顔をされてしまった。


私がもやしを手に取ってかごに入れた時は、
「これ、美味しいのかしら?」
と2人か3人がきくから。


「美味しいですよ。身体にもいいし。」
と答えると。


「どうやって料理するの?あなた中国人?ベトナム人?」
ときかれて、


「日本人です。」


ときっぱり言うと、


「あら。ま。」
と言ったまま3人とも言葉を発しなくなった。


「どうしてなのか」を考えるのも嫌なので、
私はその場を離れた。


次にお菓子のある棚から、
ハート型でシナモンとお砂糖のかかったパイの袋を取って、3袋かごに入れた。
その途端、
「それ、美味しいの?」
とまたきく人がいる。
「ええ、美味しいですよ。」
と笑顔で言うと、
その人はちょっと疑わしそうにパイの袋を手に取って、
袋の絵などをようく観察してから1つだけかごに入れた。


こうして場所を移動するたびに何かを質問される買い物は、
いいかげん神経が疲れる。


私自身がロシア人のように、
他人に質問しながら買い物をするようになるには、
ここであと何年修業しないといけないのかなと思った。