ロシアで籍を入れるのに1年近くかかったこと・・・その5
ロシアの短い夏を満喫し、日本へまた戻った私はパスポートを新しく更新し、
お金のかかる国際結婚のために仕事に励み、
再びモスクワへ戻ったのはすでに冬、12月も末になっていた。
日本の両親はロシアでの結婚登録の複雑さを話すとあきれ返り言葉もなかったが、
母は、
「あなたの選んだ人の国だから、仕方ないわね。我慢して最後まで頑張りなさい。」
と言ってくれた。
この年のモスクワは、やけに気温が低く寒かった。
家のマンションはまだ木枠の窓だったから、室内が集中暖房で22度あるといっても、
隙間風が入ると気温はたちまち下がってしまう。
あの頃はリフォームするお金などなかったので、
窓枠とガラスの間に綿を詰め込み、その上から2重3重にテープを貼って隙間風を防いだ。
(下の写真はマンションの窓を部屋の中から撮ったもの。冷凍庫ではありません。)
モスクワは、毎日マイナス20度近い日が続いていた。
そんな中でまた2時間も門の前で待つのは、
多分凍えて死んでしまう。
だから私たちは8時きっかりに着くように結婚登録所へ出かけた。
もちろん、パスポートの翻訳はしっかり頼んで揃えていた。
モスクワの冬の朝は、9時までは明るくならない。
まるで夜中のような暗い凍った通りをまた2人でテクテク歩いた。
結婚登録所に着いたのはきっかり8時。
この寒さの中、だがすでに行列はできていた。
それでも私たちは8番目だったから、結婚登録の扉にきっとたどり着けると思った。
約4時間経って、
私たちは結婚登録をする部屋に居た。
この日の係りの女性はいままでになく感じの良い人だった。
にこやかに私たちをむかい入れ、慎重に書類に目を通した。
そして、
「ここに2人のサインをして、この次来るときにはこの書類の裏にアポスティ-ユを
付けて持ってきてください。結婚登録は1ヶ月以上先の2月2日になりますよ。」
と笑顔で言われた。
なんと!
いよいよ結婚だ!
嬉しかった。
結婚ってこんなに大変だとは思わなかった。
係りの女性から結婚衣裳の宣伝雑誌(ブログその1の写真)と、
結婚指輪の宣伝CD(ブログその2の写真)をもらった。
私たちは特別に結婚式をするつもりはなかったし、
結婚指輪は彼のお母さんがプレゼントしてくれた
御祖母ちゃんの形見をするつもりだったから、
その宣伝雑誌とCDは私の生涯の記念品になった。
部屋の外に出ると、
列に並んでいた人たちが書類は受理されたかどうかきいてきた。
受理されたことを告げると、
皆 知り合いでもないのに、
「おめでとう!」
と言ってくれた。
外はマイナス20度。
嬉しくて、涙が浮かんで濡れた睫毛がシュワッと凍った。
鼻水の出そうになった鼻の中もパリッと凍った。
2人で安いカフェで珈琲を飲んだ。
苦い珈琲に砂糖を山盛り入れたから、トロッと甘い変わった味がした。
さぁ、いよいよ来年2月2日に結婚登録だ。(つづく)