ぶか~しゅか の ひとり言 (from:モスクワ)

ロシアは日本人にとっては知らないことが多い国。日本の考え方は100パーセント通じない国。でも見かたを変えれば、面白いことも多い国。ロシア人のなかで暮らす日本人の私が、見て感じたロシアをそのままに書いてみたいと思います。

ロシアで籍を入れるのに1年近くかかったこと・・・その3

日本へ戻った私は、役所で必要な書類を集めた。

私についての証明書(戸籍謄本、住民票)を役所で取り、

彼からもらった招待状(ロシアのビザを得るためにはかかせないもの)を持って

狸穴(まみあな)の(在日)ロシア大使館へ行った。

 

ロシア大使館の周りは、日本の警察がいつも厳重に警備している。

 

そしてその入り口を1歩入れば、そこは もうロシアである。

 

受付終了の12時半になると、どんなに人が待っていようと扉は閉められ追い出される。

それを申請所の門の前で警備する日本の警察官の方が心配して、

申請を終えて出てきた私に尋ねた。

 

「中にはまだ沢山待っている方がおられますか? もう12時半ですからね。

皆さん申請できますかね。」

 

こういう風に他人の身になって考えられる人が居るのが日本の良いところだと思う。

これはロシアの人々に是非見習って欲しいことだ。

 

あの頃は、ビザを無料で受け取るには3週間から1ヶ月という期間が必要だったと記憶している。

私は3ヶ月の予定で日本へ戻り、仕事に励んだ。

 

国際結婚というのはお金がかかる。

往復の飛行機のチケットだって、ヨーロッパへ行くよりモスクワへ行くほうが高いのだ。

モスクワへの往復はいつもアエロフロートを使っている。

成田エアポート行きのリムジンバスには朝早く乗るから、、

私は飛行機の中でぐっすり寝込むことになる。

飛行機では、必ず通路側に席を取るので、

寝むり込んで通路側に垂れた私の頭は

アエロフロートのスチュワーデスさんの大きなお尻でぼんぼんはじかれ、

私はその時点からロシアへ戻ることを身をもって感じる。

 

現在のシェレメチェボ空港は何棟もの新しいターミナルができて立派になったが、

あの頃は国際空港にしてはやけに薄暗く、みすぼらしいものだった。

だからシェレメチェボ空港に降り立ったときから、

「全てはこんなものだ。」

と、日本の綺麗な建物と便利さに慣れた頭を切り替えなければならなかった。

 

感じのよくないパスポートコントロールを通り、

放り投げられて汚くなったスーツケースを受け取り、

荷物が多いと

開けて調べようと手ぐすね引いて待ち構えている税関の目の前を

しら~っとした顔で通り抜け、到着ロビーの出口を出る。

とそこに、

嬉しそうな顔で走り寄ってくる彼が居た。

 

そんな彼を見るたびに、

私が好きになった人が育った国だもの、もっと良い方に理解しなくてはいけない。

と、思ったものだ。

 

日本から持ってくる書類はそろった。

あとはそれをナタリウス(公証人)にロシア語に翻訳してもらわなければならなかった。

これが結構高くついた。

1週間後にできてきた翻訳は間違いが多く、その間違いについて、

ナタリウスは一切謝らない。

それでさらに1週間待つことになった。

その間に在ロシア日本大使館へ行き、婚姻要件具備証明書というのをもらってきた。

 

さぁ書類は全て揃った。

朝5時に起きてメトロの駅から結婚登録所役場までてくてく歩き、

8時に役場の門が開くまで外で2時間待った。

季節はすでに夏。

7月のロシアは暑い。

でも水は飲まないで来た。だってお手洗いが使えないのだから。

日差しが強く、肌が痛くなるくらいやけた。

3月の寒かったときと違って、また別の意味で辛かった。

 

揃えた書類に目を通す女性職員は非常に冷たい事務的な態度で私たちを迎え入れ、

書類に間違いがないかどうかを丹念に調べた。

書類に全て目を通すと、

「パスポートの翻訳はどうしたの?」

ときいた。

 

パスポートの翻訳?

そんなこと言ってなかったじゃない。

 

彼が、

「パスポートは各国で翻訳しなくてすむように英語表記がされている。」

と言うと、

女性職員はしらけた顔で、

「ここはロシアよ。ロシア語に翻訳するのはあたりまえのことでしょ。」

と答えた。

彼が、

「この間質問に来たときはパスポートの翻訳については何も言ってなかった。」

と言うと、

「それは私の責任じゃないわ。私はあなた達に会うのは初めてですから。」

とのたまわった。

 

もう少し言いようがあるんじゃないか?!

 

私はぶち切れそうになったが、ぶち切れてもしょうがないことはわかっていたので、

歯をくいしばって我慢した。

 

だってここは結婚登録所なのだから。

 

すでに3回目の結婚登録所訪問だったが、

結局この日も結婚登録は受け入れられなかった。

彼はがっかりしている私をカフェに誘い、

ふんぱつしてカフェラテをご馳走してくれた。

甘いはずのカフェラテもこの日は何だか苦く感じた。(つづく)

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