ぶか~しゅか の ひとり言 (from:モスクワ)

ロシアは日本人にとっては知らないことが多い国。日本の考え方は100パーセント通じない国。でも見かたを変えれば、面白いことも多い国。ロシア人のなかで暮らす日本人の私が、見て感じたロシアをそのままに書いてみたいと思います。

ロシアで籍を入れるのに1年近くかかったこと・・・その1

私たちが結婚登録所(ザックス)へ最初に行ったのはもう十何年以上前の

確か3月の初めだった。

 

ロシアでは、

外国人と結婚する場合の結婚登録所No.XXという指定された登録所へ行って手続きをし、

結婚届の書類をもらい、

さらに公印確認・アポスティーユ(外務省の証明)をつける。

そしてロシア人側 (夫か、妻) のパスポートには誰といつ結婚したか、という判を押してもらう。

 

手続きはそんなに簡単ではない。

 

私は初婚だったから、手続きにそんなに時間がかかるとは思ってもいなかった。

 

モスクワで外国人との結婚登録をする場所は、その頃は1箇所しかなかった。

インターネットで場所を調べると、地下鉄の駅からは程遠いところだったので、

3月の雪解けで泥だらけの道を

脇を通る車に真っ黒な雪を跳ね上げられながら、2人で長いことテクテク歩いた。

 

結婚登録所のサイトに書かれていた場所へ着いてみると、

大きな門は閉まっていて、その真ん中に小さな張り紙がしてあり、

”結婚登録所No.XXは次の場所へ移動した。”

と書かれていた。

 

なぜ張り紙をする前にサイトにきちんと書いてくれないの!

 

彼は困った顔で、

「移動したところはここからは相当遠いから、また日を改めてくることにしようか。

ロシアではね、物事は1回ではすまないんだ。

と言った。

私が不満そうな顔で彼を見返すと、

「これはね 神様が僕達の愛情を本当のものなのか調べるために試練を与えていると思わない?」

と私の顔をちらちら見ながらつぶやいた。

 

普段は神様なんて信じていないくせに・・・。

 

そうして、私たちは仕方なく何もできずに家へ戻った。

 

結局インターネットでは調べようがないので、

張り紙に小さく書いてあった電話番号へ電話することにした。

受話器を取った愛想のない、やる気のない声の女性から場所をきいて、

一週間後、教えられた場所へ2人で行った。

 

結婚登録所No.XXはそこにあった。

 

中には結婚届の扉離婚届の扉があって、その前にはどちらも長蛇の列ができていて、

すぐに今日一日では結婚届の扉までたどりつけないことがわかった。

 

ロシアで辛いのは、お手洗いが少なく、汚いこと。

そしてたとえ役所であっても、お手洗いはそこで働く人のためで、鍵がかけられていて使えない。

まだ寒い3月に、やはり地下鉄から遠いこの結婚登録所にやって来たのに、

お手洗いもないのは辛いものがあった。

結婚登録をするというのは、嬉しく、楽しいことではないのか?

 

はっきり言って、このとき私はとても辛かった。

 

本当に神様が私たちを試しているような気がしたくらいだ。

 

結局この日も結婚登録の扉には行き着けなかった。

 

だがしかし、彼はやはりロシア人だった。

列に並んでいる間に行列の人たちから様々なインフォメーションを得て、

結婚届にはどういう書類が必要なのかをメモしていた。

 

一方私は、お手洗いを我慢するのに限界が来ていて、

早くここから出たいと彼に懇願していた。

 

そしてその日は結婚登録所のそばにあった安いカフェに入り、

お手洗いをすませ、まずい珈琲を飲み、払いたくもないチップを払い、

予想外の支出に、私は不機嫌な気持ちを押し殺しながら家路へついた。

 

彼は

といえば、私の機嫌の悪さを察知しながらも

「この次はもう少し早く来ようね。」

と困ったような笑みを浮かべていた。(つづく)

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