ロシアのお墓
モスクワも暑い夏が続いている。
でも日本の蒸し暑い夏と比べると、
気温が30度あっても日陰に入れば暑さはしのげるので助かる。
週末は久しぶりに親戚一同が集まったので、
モスクワ郊外にある墓地へ皆でお参りに行くことになった。
今回は自分達の車があるからお墓まで行くのは結構楽だ。
以前、まだ私たちに車がなかった時、
初めてお墓参りしたときは、
夏のカンカン照りの中、
ひろ~いモスクワ郊外の道を埃にまみれになってテクテク歩いた。
そして、な~んにもない野っ原の向こうに ひろ~い森があって、
その森へつながる道を30分以上歩いてお墓の入り口へたどり着いた。
なんと!
ロシアのお墓は、ふか~い森の中にある。
いや、
森全体が墓地なのだ!
森の中の墓地は、各家それぞれが勝手に墓の周りに柵を作っているから、
自分達の墓へたどりつくのに墓と墓の狭い柵の間を爪先立って通り抜け、
木々や藪の生えた小道は、
蜘蛛の巣を払いのけながら延々と歩いて墓地の奥へ入る。
あのときは主人が家の墓のある場所を忘れてしまい、
墓地の地図も忘れてきて、
森中の墓と墓の間を捜し歩き、
疲れ果て、
もう墓を見るのも嫌になった。
ロシアの墓は土葬が多い。
ソ連時代は殆どが土葬だったようだ。
現在は火葬することが義務とされている。
墓に立つロシア正教の十字架には、死者の写真が飾ってあって、
墓の前には生花ではなく、鮮やかな色の造花がリボンと一緒に飾られている。
十字架の前の土はこんもりと盛り上がっていて、
そこには死者が眠っている。
「おそらく夜は青い火(リン)が墓のまわりを飛び交っているのだろうな。」
と想像した。
私はここには絶対に入らない。
やはり日本の墓地か、あるいは海にまかれて魚のえさになるほうがいい。
深い森の中でやぶ蚊の大群にまかれながら朽ちるのは嫌だ~。
私がこんなことを思っているとは親戚の誰も知らない。
こっそり主人にだけ話して、骨と粉になっても一緒でいようと誓った。