ぶか~しゅか の ひとり言 (from:モスクワ)

ロシアは日本人にとっては知らないことが多い国。日本の考え方は100パーセント通じない国。でも見かたを変えれば、面白いことも多い国。ロシア人のなかで暮らす日本人の私が、見て感じたロシアをそのままに書いてみたいと思います。

戦勝記念日に思ったこと

5月9日は戦勝記念日だった。

この日は、テレビで朝から赤の広場で行なわれる軍事パレードを放送する。

この軍事パレードの最初の儀式、国防相が軍の各部隊にお祝いの挨拶をし、

それに答えて各部隊が戦勝記念日の「万歳!」、ロシア語で「ウラー」を叫ぶ。

私は、その「ウラー」を聞くのが好きだ。

赤の広場にこだまする「ウーラー」は圧巻で、

それを聞いていると「ロシアに居るんだな~」って漠然と感じる。

 

戦勝記念日は今年ですでに69回目を迎えた。

この日は赤の広場だけでなく、いろいろなところでお祝いの行事が行なわれる。

お祝いの行事といったって、いわゆるかしこまったものではなく、

公園で歌謡ショーが行なわれたり、ダンスの会があったりする。

とくにお年寄りたちが楽しそうに踊っているのが目に付く。

 

 

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主人の叔母さんでドイツ人の血をもつベラおばあちゃんは、

戦前から戦後にかけてスターリンの粛清で、

家屋は没収、

父親は射殺され、

5人姉妹と母親は牢獄を転々とさせられたあげく、

炭鉱での強制労働を強いられ、それでも生き抜いた。

現在生き残ったおばあちゃんには、毎年この日にお祝いの缶詰やお菓子が贈られる。

 

おばあちゃんは、いつも口の端でフッと笑いながら、

それらを見えない目で一つ一つ確かめて、

一番甘いお菓子を私にくれる。

 

ベラおばあちゃんの牢獄での8年間は、

おばあちゃんから話を聞くだけではわからない苦しみが沢山あったと思う。

だからこの日、

ベラおばあちゃんが戦勝記念日のパレードを見えないながらもテレビで聞いていたときに、

私はすこし驚いた。

 

ロシアという国がおばあちゃんを苦しめたのに、

どうして戦勝記念日のパレードを見る気持ちになるのだろう。

 

その質問に答えて、おばあちゃんはこう言った。

「この人たちが私を苦しめたわけではないからね。」

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愛国心と言う言葉について、

ロシアに住むようになって考えるようになった。

日本とロシアの政治動向にも前より注意して記事を読むようになった。

果たして私がべラおばあちゃんの立場だったら、ロシアを愛することができただろうか。

 

私の主人にもロシアの血はない。

でもロシアで育ったから、ロシア人なのだ。

ここで育ったから、ロシアの行く先を心配している。

私にとっても主人の国ロシアは、第2 の祖国になった。

だから写真のお年寄り達が楽しそうに踊っているような平和が常に続いて欲しいと願う。

 

おばあちゃんにもらった甘いお菓子はいつも心に残るほど甘い。

 

5月になって、モスクワの空にはツバメが飛び交っている。

あちこちで見かける訳のわからないわからないウォッカでの乾杯と雄叫びが

毎日のように見られる良い季節だ。

 

来年70周年を迎える戦勝記念日を ロシアはどんな状況で祝うことになるのだろう。

私は不安な気持ちで毎日ニュースを見ている。

 

ロシアの軍事パレード。ちょっと長いので、「ウーラー!」だけでも見てください。

http://www.youtube.com/watch?v=pCe4LgTBkHo