ビルベリー(チェルニーカ)
ロシアのデザートで今はまっているものがある。
それは、
ビルベリーのヨーグルトとビルベリーのトゥバロージェック。
トゥバロージェックはカッテージチーズをムースにしたようなもの。
それにお砂糖で甘く煮たビルベリーが入っている。
このビルベリーはブルーベリーの一種なのだが、
ブルーベリーよりも小さくて、酸っぱ味が強い。
そしてブルーベリーのように眼に良いといわれている。
ビルベリーは、深い森だけでとれるもの。
栽培することのできない 自然の恵みだ。
昔、まだソ連時代だった頃、ツアー旅行でイルクーツクへ行ったことがある。
そのとき空港で、子供たちが新聞紙を丸めた袋にビルベリーを山のように入れて売っていた。
あの時は添乗員さんに
「あんなものは歯が黒くなるだけだから買う価値はない。」
と言われて買わなかったけど、
今思い出すと残念で仕方がない。
ビルベリーを初めて食べたのはボルガ河の上流にある森の中だった。
深い森の中へドシドシ入っていく主人の後を追って、
私は蚊の大群に悩まされながらも、ひぃひぃ叫びながらついて行った。
大きな木々についた苔を見て 方向を確かめながら、主人は森の奥へと入って行った。
道なき道をどんどん先へ行く主人の後を必死でついて行くうち、
くもの巣が顔にまとわりついて、
私は 「ぎゃ~っ」 と叫んだ途端、苔ですべって転んでしまった。
「もう歩けない。」
半べそをかいて大声で主人の名前を呼んだ。
すると、
主人が手にいっぱいの黒い実を差し出して、
「食べてごらん。」
と私の手にのせた。
私はやけくそで、黒い実をいっぺんに口へ放り込んだ。
甘酸っぱい汁が口いっぱいに広がって、
悲鳴をあげて 渇いてしまった喉に流れ込んだ。
濃厚な甘酸っぱさ、その美味しさに涙がにじんだ。
それがビルベリーだった。
「これ、どこでとってきたの?」
と主人に訊いたら、
「ほら、足元の茂みの下にいっぱいなってるよ。」
と言われ、
蚊に刺されて気が狂いそうだったことも
くもの巣が顔に絡んで転んだことも
すべて忘れて、
私は足元の茂みのビルベリーを手当たりしだい食べだした。
美味しくて、美味しくて、森の中の熊になったような気持ちだった。
それ以来、スーパーでビルベリーの入った食品を見つけると、
私は全て試してみる。
ヨーグルトに入れても、焼き菓子に入れても、
ビルベリーは本当に美味しい。
あの独特な酸っぱ味がデザートの味をひきたてるからだ。
しかし、ビルベリー入りのトゥバロージェックは美味しいがカロリーが高い。
夏が近いというのに、
すでに2キロも太ってしまった・・・
明日はコケモモのジュースでも飲もうか・・・