ぶか~しゅか の ひとり言 (from:モスクワ)

ロシアは日本人にとっては知らないことが多い国。日本の考え方は100パーセント通じない国。でも見かたを変えれば、面白いことも多い国。ロシア人のなかで暮らす日本人の私が、見て感じたロシアをそのままに書いてみたいと思います。

ロシア人のしぐさ

先日、モスクワ郊外へ行くときのことだ。
郊外へ行く列車をいつもの2番ホームで待っていた。


するとしばらくして、
「列車は3番ホームへ着きます。」
と、女性の声でアナウンスが流れた。


私と主人は急いで階段を下り、
地下通路を通って、また階段を上がり、3番ホームへ行った。
そしていよいよあと5分ほどで列車が来るという時だ。


また女性の声で、
「列車は予定通り2番ホームに着きます。」
と落ち着いた静かな声でアナウンスが流れた。


何の説明も謝罪の言葉もない。


たぶんアナウンスの女性が間違えたのだろうと思う。
それを聞いた途端、隣に立って居た男性が、
ちふーっ
と勢いよく唾をまるめてホームへ吐くと、
「畜生なんてこった!やっぱり2番ホームじゃないか!」
といまいましそうに怒鳴った。


私たちもその男性も、あわてて階段を下り、
地下通路を通ってまた階段を上がり、2番ホームへ行くと、
間一髪で列車に間に合った。


ロシアの男性たちはよく道に唾を吐く。


主人にきくと、煙草を吸う人が多いロシアでは、
ニコチンで苦くなった口の中の唾を
まるめてプッと吐くのが癖になっているのだと言う。


見ていてあまりいい感じではないが、
ホームで隣にいた男性が唾を吐いたのは、また意味が違った。


ロシアでは、何か上手くいかなかったり、癪に触った時、
「悪魔め持っていけ!(畜生と訳してもよい)」という言葉を言いながら唾をまるめて勢いよく吐く。
これは、癪に触ったことを吐きだす意味もある。
このときは私も癪に障っていたからか、
隣に居た男性の勢いよく唾を吐くしぐさが、
野性的でとてもかっこよく思えたものだ。


また、ロシアの人たちはしゃべる時の表情も豊かだ。


たとえば、「なんだか変だ。」というようなときは、
鼻の下をのばし、口を少しすぼめる。


妙におかしな顔になるけれど、気持ちが伝わってきてよい。


そう思って、日本の実家で父の前でそういう顔をしたら、
「なんだ!お父さんに向かってそんな変な顔をして!」
とひどく怒られた。


気持ちを込めて訴えたいときの、
両手を使いながらの表現も、日本の両親の前では受け入れられなかった。
だから私は日本へ戻るときは
ジェスチャーも表情も抑えるようになった。


これだけ表現の仕方が違うロシアと日本なのだから、
わかり合えるようになるにはやっぱり時間がかかるだろうと思った。